2008年11月のお知らせ・コラム
2008.11.30
〈一茶の俳句365〉 瓜先きの冷たしという野分かな 一茶
きりえタイトル「野焼き」 霜月も今日で終わる。野焼きをして、来年の収穫のために畑を整える。野分がその煙を風景にしていた。
2008.11.29
〈一茶の俳句365〉 フクロウのくすくす笑うしとねかな 一茶
きりえタイトル「知恵を見つめて」 じっと人のせ世を見つめているフクロウ。いろいろ見抜いているのか。これからの時代は、人の生きる意味が、優しく語られる必要がある。インフラ整備の場で、美の本質を忘れてはならない。そういうことを、実はフクロウは以心伝心ホーホーホーなのかもしれない。
2008.11.28
〈一茶の俳句365〉 山キジの妻をよぶのか叱るのか 一茶
きりえタイトル「秋の声」 平和な日々を破れる狩猟解禁を告げようとしているのか。キジの声はかん高い。
2008.11.27
〈一茶の俳句365〉 はつ雁も泊るや恋の軽井沢 一茶
きりえタイトル「恋のぬけがらも」 軽井沢を詠んだ数少ない句のひとつ。かけ足で秋から冬に季節が移る軽井沢。恋のぬけがらが、木枯らしを受けている。また新しい冬の恋がはじまる。
2008.11.26
〈一茶の俳句365〉 つまる日を虫もぎいっちょぎいっちょかな 一茶
きりえタイトル「深まる秋に」 ゆく秋を惜しみ、迎える冬を、精いっぱい生きるキリギリス
2008.11.25
〈一茶の俳句365〉 団栗の寝ん寝んころりころりかな 一茶
きりえタイトル「どんぐり」 一茶かるたの「ん」の句に、これを選んだ。一句の中に「ん」が三回も登場するから、選んだ。そして、絵にはリスを刻んだ。ところがドイツ語圏の俳人は、その小動物を皆フクロウと訳した。物思いにふける小動物は、リスなどのはずは無い。それはフクロウだという理由。フクロウは哲学する鳥だと。そこで、ドイツ語訳の一茶句集の絵は、フクロウに作り変えるしかなかった。
2008.11.24
〈一茶の俳句365〉 はつ雪やいろはにほへと習う声 一茶
きりえタイトル「ユリカモメ」 雪が舞ってきた。いろはにほへと、ABC。ピーチクパーチクはじまった。
2008.11.23
〈一茶の俳句365〉 木がらしを踏んばり留めよ石太郎 一茶
きりえタイトル「しーっ」 そのうち何かはじまるよ。静かに静かに待っている。木がらしは容赦なく吹きつける。
2008.11.22
〈一茶の俳句365〉 赤い実も少し加味して散る木の葉 一茶
きりえタイトル「ナナカマド赤く」 人里離れた一軒家。すっぽり紅葉に囲まれていた。住む人ありやなしや。ナナカマドの実は遠慮かく赤を誇っていた。昔話の舞台が日々朽ち果てていってしまう
2008.11.21
〈一茶の俳句365〉 芦の穂の波にたむろす野分かな 一茶
きりえタイトル「そろそろ野分」 初雪が来てもおかしくない雲ゆきになり、野分が渡ってきた。早く家に帰ろう。暖かいお風呂が待っている。
2008.11.20
〈一茶の俳句365〉 恋人をかくした芒かれにけり 一茶
きりえタイトル「晩秋の午後」 ルリビタキが枯すすきの原っぱで、ゆく秋をたのしんでいた。
2008.11.19
〈一茶の俳句365〉 年の市何しに出たと人のいう 一茶 大御代や小村小村もとしの市 一茶
きりえタイトル「お酉さま」 西の宮神社で酉の市が立つ。 五穫豊穂を祈る飾り物が売られている。やりとりし少しでも安く買えるよう交渉する。えび寿さま、大黒さまが稲穂と共に飾られている。この日を詠んだ句は見当たらない。年の市の句がタイトルの句である。
2008.11.18
〈一茶の俳句365〉 うしろから大寒小寒夜寒かな 一茶
きりえタイトル「あの日の空」 私の空を見上げるクセは、小学四年生の夏休み、雲の絵日記をつけた時にはじまる。夕焼けがうつくしかった日は、別々の土地にいても母子で話題にすると、案外各々空を見上げて驚く。母子共通のクセになっていた
2008.11.17
〈一茶の俳句365〉 のら葡萄里近づけば小つぶ也 一茶
きりえタイトル「野ぶどう」 この句の野良ぶどうと、野ぶどうとは別ものと思われる。この絵は野ぶどう。トンボ玉のように美しい色をしている。でも食べることはできない。
2008.11.16
〈一茶の俳句365〉 つわの花石の上にも三年 一茶
きりえタイトル「つわ蕗元気」 冬に咲く花だからか、咲くとひと月近くも咲いている。うちの中庭では、陽ざしに不足があるのだろう。毎年花がつかない。
2008.11.15
〈一茶の俳句365〉 おち葉して日なたに酔いし小僧かな 一茶
きりえタイトル「冬近し」 ロングアイランドの公園で、日なたぼっこに顔を出していたカエル小僧。冬眠の準備は大丈夫なの、と聞いた。目だけキョロキョロして、動く気配は無かった。皆が自由に遊ぶ道添いの池がほんものの自然だったこの島が、うらやましかった。
2008.11.14
〈一茶の俳句365〉 吾木香さし出て花のつもりかな 一茶
きりえタイトル「われもこう」 深まる秋の象徴の色。よく見ると、先の方にピンクに花が咲いている。ちゃーんと花デスョ。
2008.11.13
〈一茶の俳句365〉 前の世のおれがいとこか閑古鳥 一茶
きりえタイトル「二人のひみつ」 カッコウと鳴いて、立ち去る前に一度電線にとまった。せっかくここに来たからあいさつしとくよ、と振り返えっれは、うちの子ども達の会話に、つい口をはさみたくなるクセが身についているからに違いない。二人はいつも、別に、と内容は秘密にした。
2008.11.12
〈一茶の俳句365〉 フクロウがのりつけおほんおほんかな 一茶
きりえタイトル「おしゃれフクロウ」 闇の中に光る目。シマフクロウに会って、にらめっこがしてみたい。
2008.11.11
〈一茶の俳句365〉キジ鳴いて小薮がくれのけぶりかな 一茶
きりえタイトル「野菊の恋」 野菊の香りに誘われて、キジの恋が成就した。オスの羽色は増々美しい。
2008.11.10
〈一茶の俳句365〉 蛼のなくやころころ若い同士 一茶
きりえタイトル「コオロギ」 庭の紅葉が、夕べの風で一気に散った。落葉に隠れて逢っているコオロギ。この鳴き方を利久好みと言うのかな。
2008.11.09
〈一茶の俳句365〉 秋風の吹くともなしや烏瓜 一茶
きりえタイトル「行って見ようよ」 風もなく暖かい日には、散歩も弾む。歩くのが当たり前の時代には、江戸と信州の往来も日常に行われていた。 坂道が道で、平らな道など、楽しくなかったのだろう。身支度を整えて外に出よう。
2008.11.08
〈一茶の俳句365〉 水鳥の我折れた仲間付き合うぞ 一茶
きりえタイトル「うわさ話」 あきれた話だ。ホントなの。上流で聞いたこと、下流でみたこと、話題は尽きることがない。ペチヤ、クチヤ。
2008.11.07
〈一茶の俳句365〉 汝等も福を待つかよ浮寝鳥 一茶
きりえタイトル 「お行儀良いユリカモメ」 風の便りを待っている。届くまで待っている。
2008.11.06
〈一茶の俳句365〉 君が世や風治まりて山ねむる 一茶
きりえタイトル「夕暮れて」 山の眠りを待って、活動を開始する生き者がたくさんいる。けもの道にフラッシュをセットして、夜中の姿を見せてくれた映像は、地球の奥行きを顕かにしてくれた。共生を説いてくれた
2008.11.05
〈一茶の俳句365〉 水鳥よぷいぷい何が気に入らぬ 一茶
きりえタイトル「水紋」 水質は、ここ数年でめざましく清澄度を増したように思う。目に見えない水に溶けた毒の残留にも、もっと気を配らないといけない。水球としての星に暮らす以上、水の美しさを誇りとしたい。
2008.11.04
〈一茶の俳句365〉ミソサゞイちっというても日の暮るゝ 一茶
きりえタイトル「ねぐらへ帰る」 農作業を終まうころ、鳥たちもちゃんとねぐらへ向かう。
2008.11.03
〈一茶の俳句365〉 木がらしの日なたぼこして念仏かな 一茶
きりえタイトル「リスのこと」 公園の日だまりは、風も日なたぼっこする。ニューヨークのセントラル公園では、リス先客だった。静かに仲間に入れてもらうことにした。
2008.11.02
〈一茶の俳句365〉 焚くほどは風がくれたるおち葉かな 一茶
きりえタイトル「からまつ落葉」 芽吹きには、恋文を書きたくなる。枯れ色からまつに誘われると、こたつのある温泉へ泊まりに行きたくなる。一日中温泉に入ることだけを考えて、テレビも消した宿で三泊してみたい。
2008.11.01
〈一茶の俳句365〉 柿を見て柿を蒔きけり人の親 一茶
きりえタイトル「柿の牧歌」 信州の鎌倉と称される塩田の里。柿の木の風景には、三重の塔のシルエットが歴史の歳月を物語る。牧歌を口ずさみたくなる。
|