2009年08月のお知らせ・コラム
2009.08.31
〈一茶の俳句365〉 そば時や月のしなのゝ善光寺 一茶
きりえタイトル「そばの花咲いて」 山道を走る。まっ白に咲いたそば畑は山の白い海だ。ぞっとする、というより、すっきりと感ずる。
2009.08.30
〈一茶の俳句365〉 しなの路やそばの白さにぞっとする 一茶
きりえタイトル「そばの花」 子どもの頃、うちでは、そばつゆの出汁は、鶏肉はキジの肉を使った。かつお節の出汁でいただくおそばが、どうしても物足りなく思えていた。五年くらい前まではそばオンチ。そばそのものの味覚が、私の舌に芽生えてきて、遅ればせ、今は、修行に入っている。
2009.08.29
〈一茶の俳句365〉 秋風のたもとにすがる小蝶かな 一茶
きりえタイトル「すもうとり草の秋」 養蚕がほぼ一段落して、家中が枝の間になる。ぞうきんがけも、やりがいがある。蚕が苦手の私は、蚕にかかわらない手伝いになると、急に元気だった。朝夕めっきり涼しくなり、働き通しだった母が、少しゆっくりしはじめる。庭でカネタタキが鳴いていた。
2009.08.28
〈一茶の俳句365〉 秋風やあれも昔の美少年 一茶
きりえタイトル 「ここにもひつじ雲」 白いワタスゲが池のまわりに広がっていた。空にはひつじ雲が広がっていた。高原でひととき夫婦度に充電をする。バカを言い合う。遠まわしだった冗談が、いきなり鋭く本音になったりしても、大空がわだかまりを吹き消してくれる。
2009.08.27
〈一茶の俳句365〉 夏山や一人きげんの女郎花 一茶
きりえタイトル「ゆれるおみなえし」 赤トンボが姿を見せはじめる。一人ごきげんに風を受けている風情。江戸時代も、今も、これからも、変わらない初秋の風景であってほしい。
2009.08.26
〈一茶の俳句365〉 つくゝと鴫我を見る夕べかな 一茶
きりえタイトル 「しーっ、見つかるよ」 秘んで待つ。じーっと待つ。川風を共有している幸せの時間だ。
2009.08.25
〈一茶の俳句365〉 草刈りや秋とも知らで笛を吹く 一茶
きりえタイトル「濃い群青の花」 ラピス・ラズリはアフガニスタン産が多いと知る。この岩石を粉にした色が群青。今は、人口石のウルトラマリンが使われる。それにしても、改めて、戦いによって荒廃しきった国の映像にこの花の青さが悲しみを誘う。
2009.08.24
〈一茶の俳句365〉 草花やいうもかたるも秋の風 一茶
きりえタイトル「りんどう」 長野県の花がりんどう。山に自生しているりんどうは、小さくて色も淡い。その花の方が、愛らしい。
2009.08.23
〈一茶の俳句365〉 稲妻をとらまえたがる子どもかな 一茶
きりえタイトル「孫が来た」 のうぜんかずらの花は、真夏に咲く。稲穂が光りはじめても、蝶を追う孫。蝶は逃げる。光も逃げる。
2009.08.22
〈一茶の俳句365〉 稲妻やえのころばかり無欲顔 一茶
きりえタイトル「ねこじゃらし」 えのころ草でネコをじゃらすから、ねこじゃらし。どこにも顔を見せる草。稲光を受けて稲田は実っていく。稲穂が重くなって頭を垂れる。日本で一番大切な原風景が、秋の田んぼだ。稲穂と同じに頭を垂れても、えのころ草は、実りなど気にもとめず揺れている
2009.08.21
〈一茶の俳句365〉 秋風にことし生えたる紅葉かな 一茶
きりえタイトル「わたすげ」 志賀高原の四十八池では、わたすげの白い穂が秋風に踊る。風にさからうことなく・・・。
2009.08.20
〈一茶の俳句365〉 稲妻やむら雨いわう草の原 一茶
きりえタイトル「すもうとり草」 いくら草を取っても、すぐに伸びる草。汗を流して働く母と、この草は相撲を取り合った。雑草は強い。
2009.08.19
〈一茶の俳句365〉 山霧の足にからまる日暮れかな 一茶
きりえタイトル「岳の花」 長野市の巨きなオリンピック施設Mウェーブに、数えきれないこま草の花が咲いていた。人の手で増やすことが可能になったのだという。
2009.08.18
〈一茶の俳句365〉 朝霧のまた改めてかゝるなり 一茶
きりえタイトル「こま草」 霧が晴れていく。岩肌に宝石のような花が姿を現した。有利鉄線に守られて咲いている現状は、私たち一人一人に反省をつきつけていた。
2009.08.17
〈一茶の俳句365〉 この奥に山湯ありとやかんこ鳥 一茶
きりえタイトル「つりがねにんじん」 山の湯を案内するように咲いていた花。私はこの花に愛称を贈りたい。この本名では長すぎる。例えば、鈴花。つりがね草でもよい。
2009.08.16
〈一茶の俳句365〉 送り火や今に我等もあの通り 一茶
きりえタイトル「送り盆」 蓮の花が終わる。ガマのござに包んでお盆飾りは川に流される。ワンパクたちは、川下でそれを拾い上げ、中からりんごや桃を取り出していた。食べたのか食べないのか、そうして楽しんだ。送り火を見ながら、急に宿題や絵日記のことが心配になった。もう夏休みが終わってしまう。
2009.08.15
〈一茶の俳句365〉 露の世は露の世ながらさりながら 一茶
きりえタイトル「蓮の三日咲」 蓮の葉に置かれた露の美しさに、この俳句が重なった。上智大学で教鞭を取ったトマス・インモース先生は、この俳句に出会い、日本で能楽師になりたいと想われたと語る。来世でそれを果たしたい、と。私は、ドイツ語圏俳人との交流から、風景さらには景観への発言も、自分の課題に加えることにした。
2009.08.14
〈一茶の俳句365〉 蓮の露仏の身には甘からん 一茶
きりえタイトル「蓮の二日咲」 つぼみが開く。ハラリと一枚ずつ開いていく。
2009.08.13
〈一茶の俳句365〉 迎え火をおもしろがりし子供かな 一茶
きりえタイトル「うら盆会」 ガマでござを編み、仏壇の中から、総てのお位牌を出してお盆飾りをした。ナスやキュウリ、モロコシのウマを供える。お墓参りから帰ったら門口で麦わらの迎え火を焚く。
2009.08.12
〈一茶の俳句365〉 盆が来てそよゝ草もうれしやら 一茶
きりえタイトル「風船かずら」 善光寺の中央通りにお花市がにぎやかだ。蓮の花も買える。むかしは、山へ盆花を採りに行った。おみなえし、ききょう、ぎぼうし・・・。
2009.08.11
〈一茶の俳句365〉 鳴く蝉の朝からじいりゝかな 一茶
きりえタイトル「ひまわり大好き」 まだ夏休みの宿題を心配する時ではない。だって、これからお盆なんだから。ひまわりの黄色大好き。
2009.08.10
〈一茶の俳句365〉 立秋も知らぬ童が仏かな 一茶
きりえタイトル「草むら」 まだまだ暑い庭にクロアゲハがやってきた。百日草は誇らしげだった。
2009.08.09
〈一茶の俳句365〉 星さまのさゝやき給うけしきかな 一茶
きりえタイトル「岩ぎきょう」 この花に出会う標高に登ると、景色は申し分なく美しい。人の成す造形物は下界の点描になっている。日本を日本人の手で美しくするのは至難に近い。日本人が国から引っ越して、スイス人に委ねる。二十年後に戻って来たら、美しい日本になっているはずだ。日本を長野と置きかえても同じことが言える。景観緑三法が、ようやく国会へ提出される時を迎える。
2009.08.08
〈一茶の俳句365〉 涼しさよどれが彦星やしやご星 一茶
きりえタイトル「ちんぐるま」 昭和20年〜30年頃の夜空は、澄み切っていた。村の夜は、明かりも少なかった。カシオペアだ、北斗七星だ、と指して教わり、見上げるだけで宇宙に旅ができた。便利を望み、進歩に胸弾ませているうちに、空がくすんでいった。
2009.08.07
〈一茶の俳句365〉 おり姫に推参したり夜這い星 一茶
きりえタイトル「いわかがみ」 七夕は、月遅れで八月に行われた。空の逢引きを想う時、地上でも、限りない恋が実ったのだろう。
2009.08.06
〈一茶の俳句365〉 風鈴ののような花咲く暑さかな 一茶
きりえタイトル「くろゆり」 恋の花と唄われた。愛する人に捧げられた花。山で出会っただけでドキドキした花だ。
2009.08.05
〈一茶の俳句365〉 世の中は蝶も朝からかせぐなり 一茶
きりえタイトル「未央柳」 玄関先に黄の花が大きな固まりに育って咲いていた。茂り過ぎたので刈り込むと言われた。剪定したら枯れた。過ぎたるは及ばざるが如し、だった。
2009.08.04
〈一茶の俳句365〉 山道の案内顔や虻がとぶ 一茶
きりえタイトル「くがい草」 虎の尾とも呼ばれ、長い花の穂には、アブやミツバチが忙しくやってくる。生業とは休みなく忙しい。夏の農家では、アブの羽音に気を止めるヒマさえ無い。
2009.08.03
〈一茶の俳句365〉 蝶とぶやしなのゝおくの草履道 一茶
きりえタイトル「やなぎらん」 夏山に咲く赤い花に集まる蝶には、赤い色が見えているという。 街の中では、看板に赤の使用自粛が求められている。これは使い方のデザイン力の問題なんだけれど、看板そのものの高品質化と大きければ良いという思い違いに皆が気付くまでは、赤色受難が続くしかない。
2009.08.02
〈一茶の俳句365〉 夏の蝉恋する暇も鳴きにけり 一茶
きりえタイトル「うめもどき」 梅より梅の花らしい。見つけようという気になって山道を行く。花の方から声をかけてくれるようになった。ねじ花、ここにいたの。一本で咲いている花には、声をかけてもらわないと出会えない。声をかけてよ、ネ。
2009.08.01
〈一茶の俳句365〉 夕月や涼みがてらの墓参り 一茶
きりえタイトル「線香花火」 佐久平では、過去の水害で亡くなった御霊にお盆にも増して、盛大に墓参りをする。一族で朝早く清掃。夕方ゆかたに着がえて、提灯を手に夕闇の細道を列になって向かう。早く花火がしたいので、お線香を数本ずつ供えたりもした。
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